新化学化社会論(村田逞詮、T.Murata)

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help リーダーに追加 RSS 「「ダイナミズム歴史観」(PowerPoint版)1〜5頁について(その55)」について

<<   作成日時 : 2009/01/13 21:19   >>

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「ダイナミズム歴史観」(PowerPoint版)1〜5頁について(その55)」について
 筆者は、日本が絡む今後の世界経済情勢は、米中関係を基軸に進むと想定しているが、この問題を考える上で、極めて示唆に富み、触発される記事が、本日(2009/01/13(火))の朝日朝刊13版3面に掲載されている。

 メインタイトル、“「成長の質」高める道を”、サブタイトル、“世界経済危機と日本、 多様化する資本主義 / 「低炭素国めざせ」”とする本社主筆、船橋洋一氏の文である。

 曰く『レーガン時代が、ジャパン・マネーを引き込むことで、“双子の赤字(財政・経常)”をものともせず軍拡・減税を推進したように、ブッシュ時代は、チャイナ・マネーの支えで二つの戦争と低金利政策に邁進した。中国は対米輸出で稼いだドルで米国債を買う。それによって米国は経常収支赤字を補填し、低金利政策を続ける。中国もまたバブルを踊ったのである。その米中談合バブルが崩壊した。』と、語る。

 日米、米中の関係を、端的に表し、蓋し名文である。

 数年前、中国出張の折、中国徐州の大学教授が、アメリカは中国のお蔭でイラク戦争をしていると言われたことが、想い出される。

 更に、“米中談合バブルの崩壊”とは、言い得て妙である。

 今回の米国発“経済恐慌”(もう“恐慌”と呼んでも可だろう)前の米中の経済関係を、“米中談合バブル”とまで言われていること、私をして、事態の認識を新たにさせた。 
 
 両国は、一般にはそう認識されていなくとも、水面下では、経済的利益を共有するステークホルダーであるとの、筆者の従来認識を大きく超えるもので、とても触発された。
 
 今後の大学講義等(※)で、この文言を、是非使わせて頂きたい。

 更に、船橋氏曰く『この両国(中国と日本)は海外の米国債保有のそれぞれ21%、19%を占めている。・・・・・世界景気回復と世界的不均衡是正のためには、中国の消費と日本の投資を拡大することが不可欠である。それを促すため、金融財政政策調整とともに、米中、日中間で経済構造改革協議を始めてはどうか。』

 いずれにしても、オバマ米次期大統領は、次世代技術を狙うグリーンディール政策のためにも、トゥー・ビッグ・トゥー・フェイルとされるビッグ3の救済のためにも、金融機関の救済のためにも、国民医療制度構築のためにも、結果としてインフレ政策になり、従い、ドル暴落の危険性すらある赤字国債を増発してさえも、巨額に上る財政出動をせざるを得ないわけだから、米国債保有高、並びに、外貨準備高等で、巨額のドル資産を有する中国、並びに、日本も、とても無関心ではいられない。

 従い、氏が言われる“米中、日中間での経済構造改革協議”は、欠かせない。

 また、氏のいわれる“中国の消費と日本の投資を拡大すること”は、現今の経済不況で窮地に陥っている日本の“もの作り”産業の製品販路のためにも、欠かせない。

 いずれにせよ、これらの施策は、“自由主義経済”任せにはできない。
 “計画経済”、換言すれば、“社会主義経済”(この言葉が嫌いなら、使わなくて可だが、もはや言葉尻にとらわれている時代ではないことも銘記すべきである)が必要になる。

※:米国発金融危機以前に講じた講義(@2006/05/02執筆、A2007/04/29執筆、B2008/05/15執筆)

@2006/05/02執筆(講義日:2006/06/09)

    早大理工学部各学科共通一般選択科目「開発協力論」レジュメ
     ― 日本の「開発協力」の内容は、自ずと決まっている ―

          村田 逞詮 (Toshiaki Murata)

          工学博士 民間会社・技術顧問 


1、この20年間で途上国、とりわけ、筆者が“開発協力”の主対象として、現地調査を重ねた隣国、中国の様相が、好むと好まざるとに関わらず、明らかに激変している。

2、識者は、誰もその理由を説明していないが、現実問題として、中国は、文字通りのODA対象の途上国から、“世界の工場”へ、そして、今や“経済大国”になってきている。

3、中国の“経済大国化”の原因・兆候は、先進国の経済学者が予想すら出来なかったにせよ、ジャーナリストがスクープしなかったにせよ、かなり以前からあったはずである。
 見落としの原因は、多分、事実を認めたくなかった先進国の“偏見”であろう。

4、だが、現在の中国の「工業化」に基づく経済的繁栄は、沿岸諸都市のみである。
 広大な内陸は、まだ、旧態依然とした農業に基づく“自給自足的村落共同体”であり、沿岸都市部への安価な“出稼ぎ労働力供給源”に留まっている。

5、この現象は、農村の若年労働が“金の卵”と持ち上げられた約40年前の日本に酷似している。
 だが、スケールは、人口比から判断し、約10倍である。

6、従い、これから、好むと好まざるとに関わらず、昔日の日本の繁栄を約10倍にした凄まじい“中国の大繁栄の時代”がやってくる。

7、今の僅か5%の富裕層でも、人口的には日本人の50%にも相当し、購買力は凄まじく、来日観光団は、消費傾向が先細りの老舗デパートにさえ、再生の機会を与えている。

8、トヨタも然り、西側先進国の車メーカーは、こぞって、中国市場を目指している。

9、従い、今にも勝る中国の「工業化」の反作用としての“環境問題”も生じてくる。

10、繊維産業に代表される軽工業は、既に世界を隅々まで完全に制覇している。
 だが、製鉄業、造船業等の重工業は発展初期である。
 石油化学工業にいたっては、ドイツ、英国等の支援を受け、南京、上海のエチレンセンターが稼動し始めたばかりである。

11、従い、現在でも大問題だが、“地球環境”を痛めつける重工業、石油化学工業等の“エネルギー多消費産業”の隆盛は、これから加速するのである。

12、従い、日本の果たすべき役割、「開発協力」の内容は、自ずと決まっている。 

13、“ユノカル買収事件”に象徴される、強い通貨、“元”は、米企業の買収、資源の買い漁りも進めても、外貨準備高は、増すばかりである。

14、対中貿易赤字に苦しむ米国は、“元”切り上げも、痛し痒しである。 なぜか考えよ。

「地球環境」面からの“考・「開発協力」”

1、現実的な地球環境問題の深刻さは、開発、とりわけ、“エネルギー多消費産業”(重工業、石油化学工業等の)がイニシアチブをとる「工業化社会」の更なる進展にある。

2、「工業化社会」は、日本を含む西側先進国では、最盛期を過ぎ衰微の基調にあるが、これから最盛期に向かう中国、旧東欧諸国、これから発展期に向かうインド等を想定すると、傍観すれば、更なる悪化は避けがたい。

3、“エネルギー多消費産業”がイニシアチブをとる「工業化社会」が深刻な“地球環境問題”を惹起する理由は、「工業化社会」を支える機軸技術、とりわけ、原動力技術、化学反応技術が、熱力学、熱化学(化学熱力学)に基づくからである。

4、熱力学、熱化学が依拠する“熱力学第二法則”は、“エントロピーの増大”を説く。
 “エントロピー”とは、平たく言えば、温度下流域への熱の“拡散希釈倍数性”である。

5、工業活動は、利便性を築くが、その下に、否応無く、熱の“拡散希釈倍数性”(エントロピー)を増大させ、“熱汚染”を拡大する。

6、“工業廃棄物”は、工業活動による“廃熱(熱汚染源)の媒体”である。

7、従い、地球環境汚染の進展を抑えるのは、「工業化社会」を止めることだが、そうはいかない。
 そこで考える。生産活動を、“地球環境生態系の範疇”に留める? できるか?

8、「工業化社会」が増やし続ける“地球温暖化ガス”の代表であるCO2の増大は、H2Oと共に、地球系の“エントロピーの増大”の象徴である。

9、だが、これらは、光合成の原料であり、自然はこの反応をベースに植物を創り、その上に動物を創り、果ては、人間まで創ってきた。

10、では、光合成は、“熱力学第二法則”、即ち、“エントロピー増大則”に反するのか?

11、さにあらず、さんさんと地球に降り注ぐ太陽光の光エネルギーは、“エントロピー増大則”に従い、“宇宙空間に拡散希釈”し続けているのである。

12、では、“人工光合成”に依拠する「次世代社会」を築ければ、“地球環境生態系の汚染”は止まるか? 
 どうか? 考えられたい。

13、今回は割愛するが、配布した副教材は、“人工光合成”をその頂点技術に据える“光・量子化学技術”に依拠する「次世代社会」、「新化学化社会」を述べている。
 今後の勉強の参考にされたい。  以上         
      
A2007/04/29執筆(講義日:2007/05/18)

    早大理工学部各学科共通一般選択科目「開発協力論」レジュメ

          村田 逞詮 (Toshiaki Murata) 

         工学博士 民間会社・技術顧問 

 この10年で、‘開発協力論’が対象とする途上国の実情は、大きく変貌した。
 
 とりわけ、私が主に係わってきた中国が、大変貌を遂げた。
 中国は、先進国技術を導入する文字通りのODA対象国から、5年位前から‘世界の工場’と言われる存在になり、更に、最近では、‘経済大国’になり、中国の経済動向が、“世界同時株安”を誘因するまでに至っている。
 
 既に、中国は、軽工業では、世界市場、とりわけ、米国の消費市場を席巻し、米国向け生産工場(極論すれば、米国の国外工場)の感さえある。
 中国は、世界市場への売りまくりで、外貨準備高は、断トツ世界一を誇り、有り余る外貨で、米国債を買いまくり、巨額な赤字の米国財政を支える米政府最大のサポーターであり、巨額のドル建て外貨準備を持つ対米債権国である。
 つまり、米中は、政治的には、異なってはいても、一般国民には、知られていなくとも、経済的には、既に、利害が一致するステークホルダーなのである。

 そのため、常識では、双子の赤字に苦しむはずの債務国、米国は、昨今の住宅バブルの崩壊で、各所に焦げ付きが出て、先行きに暗雲が垂れこめつつも、つまり、米国経済の先行きは予断を許さないにしても、現在は、中国と、超低金利下の日本のお陰で、つまり、両国の“財布”で(お陰で、両国の一般国民は損をしているが)、経済的に大繁栄し、GDPは、依然トップである。
 ちなみに、米国GDPの約7割が消費経済である。

 米国のヘッジファンドや、日本を含む世界の投資家は、低金利の円資金を調達し、中国の生産や、住宅バブルがはじけても、まだまだ根強い米国の消費に、大量の資金をつぎ込んで儲けまくっている。
 つまり、IT金融手段を駆使するヘッジファンドは、調達した大量の円資金を、国際通貨ドルに換えて投資する大規模な円キャリートレードで、巨額なマネーを流動させ、金利差を稼ぎ、巨額な利益を得ているのである。

 また、現在の日本は、かつて言われた“貿易立国”(中小企業も含め、国内の‘ものづくり’産業が育つ)では、既になく、資本(含む、株式投資)と技術とを、海外、とりわけ、中国に輸出する“海外資産による立国”(国内の‘ものづくり’産業が育たない)になっている。
 
 即ち、現在の日本は、海外資産により経済が大繁栄しても、高度経済成長期に‘ものづくり’産業を育てた中産階級が崩壊し、貧富の差が拡大する構造になっている。
 これは、日本に限らず、‘ものづくり’産業が必要とする安価で、高品位の労働力を得にくい先進国に共通の現象である。
 
 中国の軽工業の大繁栄の背景には、安価で、高品位の‘少なくとも、読み書きそろばんができる’労働力が得られる社会経済環境がある。
 EU先進諸国が、中国に負けない経済競争力を目指し、一般国民の積極的な賛意がなくとも、発展途上の旧東欧諸国、更には、生活習慣の大きく異なる‘非キリスト教国’のトルコまで取り込まんとするのも、安価で、高品位の労働力を、得んがためである。

 経済のグローバリゼイションが進む昨今、遠からず、日本経済も、中国、韓国等と、EUを模した「東アジア経済共同体」を志向せざるを得ないだろう。
 なぜなら、日本経済にとっても、韓国経済にとっても、近未来にかけて、今以上に旺盛な購買力が期待できる巨大消費市場が、必要不可欠であり、中国には、高品質で相対的に安価な賃労働が、今まさに、存在し、その賃労働をじっくり育てることにより、しっかりした中産階級が徐々に育ちつつあり(※)、次世代に向けて、欧米も狙う巨大消費市場が育ち得るからである。

 [※:中国は、最近、2000年も続いた‘農民税’を廃止している。これは、1949年の人民共和国建国時の地主・小作制の廃止以来の、歴史を画する近代化政策(世界史的には、‘市民革命的’な、賃労働とそれに基づく蓄財を誘導する「資本制工業化」政策)である。]

 諸君らが社会に出て、活躍する近未来に、日本にも大いなる幸(国内円経済にも還元される)を齎す「東アジア経済共同体」を実現するには、今、現在からの中国との平和共存、相互信頼が、何としても必要である。
 政治には、国境があっても、経済・産業には、国境はないのである。
 従い、諸君ら、次世代に生きる人間は、その精神的基軸に、国内でしか通用しない‘ナショナリズム’ではなく、国際社会で通用する‘ヒューマニズム’を、据えることが肝要である。

 現在、中国の「工業化」は、重・機械工業や、化学工業を充実させていく段階になっている。
 こうしたエネルギー多消費産業の発展は、地球環境に苛酷な負荷を与える。
 従い、この分野での日本の“開発協力”では、環境技術での協力が、強く望まれており、微力ながら、私も、現在、その任に当たっているが、4〜6年先に学窓を育つ諸君らには、各々が研鑽した専門技術(知的レベルの高い)で、現今の協力を、凌駕、アウフヘーベンする“開発協力”を期待してやまない。  以上                       

B2008/05/15執筆、修正2008/05/20(講義日:2008/5/30)

    早大理工学部一般共通選択科目「開発協力論」レジュメ

          村田 逞詮 (Toshiaki Murata)

         工学博士 民間会社・技術顧問

 私の1回/年の当講義も、早いもので、今年で10年目になる。
 当初、途上国に対する“開発協力”は、技術支援(生産技術、及び、環境技術)、並びに、それに伴う開発資金の支援を意味したが、この10年で、様相は大きく変わった。

 例えば、中国は、3、4年前の“世界の工場”(相対的に良質で安価な労働力を提供する)と言われた状況を経て、最近では、経済大国(富裕層の購買力が旺盛な)とさえ言われる状態にまでなっており [中国は世界第4位の経済大国(2007/10/26朝日朝刊“ウォッチ”)] 、IT技術で台頭してきたインドも、中国に続く様相を呈している。

 当初の講義では、主に、私の経験を踏まえて、途上国のみならず、当時の貿易立国日本にとっても欠くことのできなった資源開発技術、並びに、環境保全技術等を講じてきた。
 だが、ここ数年、これでは、諸君らが学窓を巣立つ4年、ないしは、6年後には、当該技術は、陳腐な技術に過ぎないと反省し、貴重な時間を有効に使うべく、考えあぐねた末、これから4年、又は、6年間、理工学を学ぶ諸君らの基礎理念となり、卒業後も、理工卒の教養となる、“時の推移”に無縁な“本質論”(資源論、環境論等)を講じることとした。

 本年も基本的にこれを踏襲しつつも、理工学徒が学業からは知り得ない“時の推移”に係わる、近年大変貌を遂げている途上国・先進国間の“産業経済関係・動向”も、活写しておく。
 その理由は、法、経済等の文系卒に比べ、理工系卒の最大の欠点が、“世界の産業経済動向”に疎く、ある水準以上の当該話題と議論とに就いていけないことを、業界、企業等において、多々見聞きしているからである。

 中国、インド等の途上国の優秀な留学生が先進国の諸々の技術を学びつつある現状で、なおかつ、具体的な技術論で、途上国に貢献できる主分野は、環境技術分野、とりわけ、低エネルギーで、公害物質を分解除去する等の“環境化学分野”である。

 なぜならば、例えば、中国の工業化は、軽工業段階を、より人件費の低いベトナム等に譲り、エネルギー多消費産業である“重化学工業段階”に達し、CO2のみならず、大気に、水域に、総じて、地球環境に、多大の負荷を与えているからである。
 かつての日本もそうであったが、エネルギー多消費産業である“重化学工業段階”の資本制工業国は、利益を求め過ぎるあまり、生産に寄与しない環境保全対策を、軽視しがちになるからである。

 ここで、話題を変える。

 代返を頼み、この授業に出なかったり、出ても眠っていたりする学生の便を考え、理工学徒が学業からは知り得ない“時の推移”に係わる途上国・先進国間の“産業経済関係・動向の要点”を、記しておく。

 諸君らが、学窓を巣立つ4〜6年後は、後世の学者が歴史の大転換点と呼ぶ時代になろう。
 日本経済は、現在、既に、貿易よりも投資(利子・配当)で稼ぐ体質へ変わりつつある(05年から、それまで稼ぎ頭だった貿易の黒字を、投資の黒字が上回るようになった)。

 大変貌を遂げている世界の産業界の経済的背景には、これまでモノ作りを先導してきた日本を含む先進資本制工業国の爛熟化、とりわけ、近年、生産の大半を中国に依存し、消費大国化した超経済大国、米国の爛熟を超えた脆弱化がある(GDPの実に7割が消費)。
 
 例えば、朝日社説(2007/10/26)は、これを、「世界の資金循環は、経常赤字が限界を超えて増え続けている米国に対して、黒字を稼ぐ中国や日本等のアジア諸国と産油国が資金を出すことで保たれている。」と述べ、2008/03/15朝日朝刊は、「経常赤字を膨らませながら、消費を続ける米国に世界中がモノを売るという危うい不均衡の上に成立していた。」(13版経済12面記事)と述べている。

 米国をして、これを可能にしたのが、債権を証券に換える金融技術(※1)である。

 [※1:実体経済(GDP)から乖離し、肥大化した金融経済(※2)を顕在化させたマネーゲーム技術。
※2:世界全体のGDPに対する金融資産の割合:1980年109%、2005年316%に急増(2008/04/04朝日朝刊“経済気象台”)]

 問題のサブプライムローン債券も当該技術の産物(金融商品)である。

 アジアの発展途上国、中国と、それに続くインド、更には、中東産油国とが、資本力でも、欧米先進国を脅かしつつあるほど旺盛であり、中でも、中国は、安価で良質な労働力と、潜在的な大消費市場とを有するため、近未来に向け、賃労働階級を、大量の中産階級に育て上げ得る実体経済系としての資本制大国、即ち、経済大国になりつつある。
 ここに、衰微する米国経済を象徴する大事件が起きた。
 サブプライムローン問題である。

 “悪貨は良貨を駆逐する”、これは、近世16世紀、英国のエリザベス朝で、財政顧問を務めたグレシャムが唱えた文言で、“素材価値の落ちる貨幣の方が、素材価値の高い貨幣より流通し易い”ことを意味する経済法則であるが、昨今の、米国サブプライムローン問題に端を発する、焦げ付きリスクが高く、それを薄めるべく、金融技術を駆使して“潜在的な不良債権”を、巧みに混ぜ込んだ“高金利の証券化商品の世界的流布”は、グレシャムの法則の、現代・信用貨幣時代バージョンである。

 現代版“悪貨”の流布、顕在化が、世界中で、米ドルの信用下落、欧米で、信用収縮、即ち、深刻な“貸し渋り”を招いている。
 ここに、その対策として、資金繰りに窮する投資家を助ける目的の中央銀行による度重なる金利の引き下げ、金融市場への資金注入(流動性確保)が実施されているが、これにより市場に“金余り”が生じ、別の問題を起こしつつある。
 投機マネーの暴走である。
 市場に資金を潤沢に供給すればするほど、投機マネーは、商品先物市場へ流入する。

 投機マネーの総額は、資本主義の限界を示していると思われるほどで、実に日本の国家予算の200倍、1京5750兆円に達し、猛威をふるっている(2008/05/04 TBSサンデーモーニング、金子慶大教授)。
 日本総研の寺島氏曰く「現代資本主義は、制御できない状態に入りつつある。マネーゲームの設計し直しが必要である」(2008/05/09テレ朝“報道ステーション”)。
 巨額な資金が動く一方で、低所得者層も急増し、日本では、「年収200万円以下のワーキングプアーが、ついに1000万人を超えた」(2008/05/18テレ朝サンプロ、田原氏)。

 市民生活を破壊しかねないWTI原油先物価格の高騰に引きずられる原油(実需)、ガソリン等の高騰(WTI原油の実需は、世界の0.5%にも満たない故、極めて不可思議な価格形成である)、穀物先物価格と、バイオエタノールに引きずられる穀物価格の高騰は、投機マネーの仕業である。
 なかでも、穀物価格の高騰は、日本でも酪農業を成り立たなくさせつつあるが、アフリカ等の開発の遅れた途上国では、より深刻で、飢餓に繋がるゆゆしき問題である。

 商品先物市場の活況は、日本株の6割(2008/01/27テレ朝サンプロ、太田大臣)を占める外人投資家の売り、投資先換えを招き、日本の株式市場を低迷させている。

 国の借金である日本国債でも、サブプライム問題による金融不安で、外人投資家(約7%)が売りに走り、今後の国債発行に支障をきたす恐れがある。
 きっかけは、米証券大手ベアー・スターンズの3月中旬の経営破綻で、同社傘下の投資ファンドが日本国債を大量に売却したため、日本国債の暴落に近い急落があり、国内投資家も損失を被っている(2008/05/08朝日朝刊13版7面)。

 このサブプライムローン問題を契機に、世界最大の経済大国、米国においても、経済規模の指標としてのGDP、その七割が“消費”という実体経済系としての“赤字”体質(実体経済としての矛盾)が、誰にも判る形で、ようやく、金融経済を含めた社会全体の経済系の矛盾として顕在化・露呈化してきた。
 これは、サブプライムローンに限らず、ローン経済(“前借り”借金経済)全般の破綻の兆候でもある。
 この矛盾の解決が、実体経済系としての世界経済を健全な方向へ導く。

 本来の実体経済系としての資本制は、金融経済に依拠する資本力を大前提に成立しつつも、それは経済的基礎であって、それに基づいて、相対的に安価で良質な労働力と、不特定多数とによる消費市場とで、その全体系が成立するものである。
 しかし、いわゆる先進国では、もはや、安価で良質な労働力は乏しく、消費市場も狭隘化しつつある。
 従い、先進国では、金融商品なる怪しげな商品を創出してまでしても、実体経済と乖離した金融経済を繁栄させようとし、その努力と結果が、ローン経済の繁栄と、それに続く、破綻である。

 その一方で、前述にように、中国、インド、中東産油国が、資本力でも、欧米先進国を脅かしつつあるほど旺盛である。
 だが、その繁栄は、デカップリング論が言う、サブプライム問題で衰微を顕在化させた先進国経済を救う域には、達していない。

 なぜなら、中国の生産、並びに、インドのIT技術の世界経済への貢献は、主として米国の需要(消費経済)に応ずる安価で良質な労働力の供給と、利益の米国への還流であって、未だ、自国の賃労働階級を、大量の中産階級に育て上げ得る実体経済系としての資本制大国、即ち、経済大国には、至っていないからである。
 勿論、中国に、中産階級が育てば、10億人の購買力が期待でき、懸念される世界経済恐慌は回避でき、日本を含む世界経済は、安定化する。
 問題は、7月のサミットでも議論されようが、その間(中国に十分な内需が育つまでの間)どうするかである。

 話題を変える。

 2001年のノーベル経済学賞受賞の米コロンビア大のジョセフ・スティグリッツ教授は、イラク、アフガンの戦争経費を3兆j(315兆円)に上るとし、これも米経済の危機を加速していると述べ、この戦争費用の約40%が外国からの借金(クレジットカードの使いまわしのような)で賄われたと、述べている(2008/05/19朝日朝刊13版9面)。
 
 理工系学徒も、こうした論理に付いていけるように、教養を磨かれたい。   以上                             


                                      


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「ダイナミズム歴史観」(PowerPoint版)1〜5頁について(その57)
「「ダイナミズム歴史観」(PowerPoint版)1〜5頁について(その57)  昨日(2009/01/14(水))の朝日朝刊13版6面は、『中国貿易黒字 世界1位』と報じている。  サブタイトルには、『08年 年末、輸出が急減速』とある。  言いたいことは、『輸出が急減速』、にもかかわらず、『中国貿易黒字 世界1位』ということであろう。  この“情報”は、少々大袈裟に聞こえるかもしれないが、実は、世界史を画する内容を包含している。 ...続きを見る
新化学化社会論(村田逞詮、T.Murat...
2009/01/15 17:39

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