新化学化社会論(村田逞詮、T.Murata)

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help リーダーに追加 RSS 2007年5月某大理系学部教養課程講義・レジュメ

<<   作成日時 : 2008/12/27 12:21   >>

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 この10年で、‘開発協力論’が対象とする途上国の実情は、大きく変貌した。
 とりわけ、私が主に係わってきた中国が、大変貌を遂げた。
 中国は、先進国技術を導入する文字通りのODA対象国から、5年位前から‘世界の工場’と言われる存在になり、更に、最近では、‘経済大国’になり、中国の経済動向が、“世界同時株安”を誘因するまでに至っている。
 
 既に、中国は、軽工業では、世界市場、とりわけ、米国の消費市場を席巻し、米国向け生産工場(極論すれば、米国の国外工場)の感さえある。
 
 中国は、世界市場への売りまくりで、外貨準備高は、断トツ世界一を誇り、有り余る外貨で、米国債を買いまくり、巨額な赤字の米国財政を支える米政府最大のサポーターであり、巨額のドル建て外貨準備を持つ対米債権国である。

 つまり、米中は、政治的には、異なってはいても、一般国民には、知られていなくとも、経済的には、既に、利害が一致するステークホルダーなのである。

 そのため、常識では、双子の赤字に苦しむはずの債務国、米国は、昨今の住宅バブルの崩壊で、各所に焦げ付きが出て、先行きに暗雲が垂れこめつつも、つまり、米国経済の先行きは予断を許さないにしても、現在は、中国と、超低金利下の日本のお陰で、つまり、両国の“財布”で(お陰で、両国の一般国民は損をしているが)、経済的に大繁栄し、GDPは、依然トップである。
 ちなみに、米国GDPの約7割が消費経済である。

 米国のヘッジファンドや、日本を含む世界の投資家は、低金利の円資金を調達し、中国の生産や、住宅バブルがはじけても、まだまだ根強い米国の消費に、大量の資金をつぎ込んで儲けまくっている。

 つまり、IT金融手段を駆使するヘッジファンドは、調達した大量の円資金を、国際通貨ドルに換えて投資する大規模な円キャリートレードで、巨額なマネーを流動させ、金利差を稼ぎ、巨額な利益を得ているのである。

 また、現在の日本は、かつて言われた“貿易立国”(中小企業も含め、国内の‘ものづくり’産業が育つ)では、既になく、資本(含む、株式投資)と技術とを、海外、とりわけ、中国に輸出する“海外資産による立国”(国内の‘ものづくり’産業が育たない)になっている。

 即ち、現在の日本は、海外資産により経済が大繁栄しても、高度経済成長期に‘ものづくり’産業を育てた中産階級が崩壊し、貧富の差が拡大する構造になっている。

 これは、日本に限らず、‘ものづくり’産業が必要とする安価で、高品位の労働力を得にくい先進国に共通の現象である。

 中国の軽工業の大繁栄の背景には、安価で、高品位の‘少なくとも、読み書きそろばんができる’労働力が得られる社会経済環境がある。

 EU先進諸国が、中国に負けない経済競争力を目指し、一般国民の積極的な賛意がなくとも、発展途上の旧東欧諸国、更には、生活習慣の大きく異なる‘非キリスト教国’のトルコまで取り込まんとするのも、安価で、高品位の労働力を、得んがためである。

 経済のグローバリゼイションが進む昨今、遠からず、日本経済も、中国、韓国等と、EUを模した「東アジア経済共同体」を志向せざるを得ないだろう。

 なぜなら、日本経済にとっても、韓国経済にとっても、近未来にかけて、今以上に旺盛な購買力が期待できる巨大消費市場が、必要不可欠であり、中国には、高品質で相対的に安価な賃労働が、今まさに、存在し、その賃労働をじっくり育てることにより、しっかりした中産階級が徐々に育ちつつあり(※)、次世代に向けて、欧米も狙う巨大消費市場が育ち得るからである。

 [ ※:中国は、最近、2000年も続いた‘農民税’を廃止している。これは、1949年の人民共和国建国時の地主・小作制の廃止以来の、歴史を画する近代化政策(世界史的には、‘市民革命的’な、賃労働とそれに基づく蓄財を誘導する「資本制工業化」政策)である。]

 諸君らが社会に出て、活躍する近未来に、日本にも大いなる幸(国内円経済にも還元される)を齎す「東アジア経済共同体」を実現するには、今、現在からの中国との平和共存、相互信頼が、何としても必要である。

 政治には、国境があっても、経済・産業には、国境はないのである。

 従い、諸君ら、次世代に生きる人間は、その精神的基軸に、国内でしか通用しない‘ナショナリズム’ではなく、国際社会で通用する‘ヒューマニズム’を、据えることが肝要である。

 現在、中国の「工業化」は、重・機械工業や、化学工業を充実させていく段階になっている。

 こうしたエネルギー多消費産業の発展は、地球環境に苛酷な負荷を与える。

 従い、この分野での日本の“開発協力”では、環境技術での協力が、強く望まれており、微力ながら、私も、現在、その任に当たっているが、4〜6年先に学窓を育つ諸君らには、各々が研鑽した専門技術(知的レベルの高い)で、現今の協力を、凌駕、アウフヘーベンする“開発協力”を期待してやまない。                         

 [原典:村田逞詮(Toshiaki Murata)、“2007/05/18某大(理系)教養講義・レジュメ”]

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